スタートアップ評価:なぜ透明な手法がブラックボックスに勝るのか

書籍に基づく要約 《Startup Valuation: A Comprehensive Guide to Valuing Fast-Growing Pre-Revenue Companies》 (新しいタブで開きます)——Simon Mak

articleSimon Mak2025年12月1日

創業者と評価の話をすると、必ず同じ質問が出ます。「どの計算式を使えばいいですか」。私の答えはたいてい決まっています。式そのものより、計算の筋道を示せるかどうかのほうが大切です。スコアカード法、バーカス法、VC法は、アーリー段階の企業を見るときに役立つ経験的な枠組みです。IFRS/HKFRSやIVSが定めた会計上の計算式ではありません。中身を伏せたブラックボックスにすれば争いのもとになり、前提を開いて筋道を示せば信頼につながります。

3つの枠組み、3つの前提

どの手法も、リスク、進捗、資金調達、出口価値についての前提の上に成り立っています。いずれも必須の測定基準ではありません。

  • スコアカード法:比較可能な企業の評価を出発点に、チーム、市場、製品、競争といった要素へ重みを付けて調整します。重みと比較対象は開示し、根拠を示す必要があります。そこが示されなければ、計算は主観を包み隠すだけになります。
  • バーカス法:リスクを下げるマイルストーン(一般にはチーム、アイデア、試作品、戦略的提携、市場投入)に価値を割り当て、合計します。報告書には、採用した版、各マイルストーンの根拠、上限や通貨の前提を書き添えます。万能のバーカス式というものはありません。
  • VC法:出口価値を見積もり、投資家の目標リターン(割引率)を当てはめてポストマネー価値を求め、新規出資額を差し引いてプレマネー価値を算出します。出口の前提と目標リターンが結果を大きく動かすため、感度分析は欠かせません。

ここで挙げたのは考え方の整理です。議論を組み立てる助けにはなりますが、専門家の判断に代わるものではありません。

IFRS 13が求めていること

IFRS 13は、公正価値を市場参加者の目線での測定に結びつけます。インプットは3つのレベルに分かれ、活発な市場の相場価格が最も優先され、観測できないインプットの優先度が最も低くなります。測定全体で重要なインプットのうち、最も低いレベルがその測定のレベルになります。レベル3の測定では開示の重要度が高く、用いた評価技法とインプット、重要な観測不能インプットの定量的情報、繰り返し行うレベル3測定については感度と重要なインプット同士の関係まで示します。

透明性が任意でないのは、それが測定の規律そのものだからです。

透明な計算は客観的な測定ではない

計算式は、インプットから結果までの道筋を検証できるようにします。ただし判断を消すことはできません。どのインプットを採るか、市場の証拠にどう合わせるか、その手法が計算単位と市場参加者の前提を映しているか。ここは人が決めます。表計算が正確でも、結論が誤っていることはあります。

必要なら複数の技法を併用し、調整の理由を説明してください。IFRS 13の設例は、単一の技法で足りる場合もあれば、複数を用いるべき場合もあるとしています。スタートアップなら、各手法の結果がどう違うかを見せ、一点の数字ではなく、選んだ結論とその理由を語るべきです。

資金調達の価格と公正価値は別物

ベンチャーラウンドで付いた株価が、そのまま公正価値になるわけではありません。調達条件や優先権、その他の権利によって、その価格が対象持分の価値とどう関わるかは変わります。手元の資料には、スタートアップ固有のIFRSルールや数値調整までは示されていません。同一視する前に、分析してください。

私が実際に行うこと

  • 手法を選び、比較対象、重み、マイルストーン、出口の前提、目標リターンを開示する。
  • 最も効く要因について感度分析を行う。
  • 事実が許すなら複数の手法を使い、結果を調整する。
  • 公表前に、最新のIVSの版、発効日、香港での適用状況を、IVSとHKICPAの一次資料で確認する。

詳しくはStartup Valuation: A Comprehensive Guide to Valuing Fast-Growing Pre-Revenue Companiesとstartup-valuation.ascent-partners.comをご覧ください。IFRS 13の本文はIFRS 13 illustrative examplesにあります。